2017年に発売されたニュージーランド発の飲料ブランド「Ārepa(アーレパ)」。同国の先住民であるマオリ族の言葉で、「アルファ」を意味する「Ārepa」は脳の機能を高め、集中力をアップさせる「ヌートロピック(Nootropics=向知性薬)」のブレインドリンクとして、注目を集めています。
発売当時はオークランドの高級店2店舗でしか売られていなかった「Ārepa」は、いまやスーパーやガソリンスタンド、コンビニエンスストアなど約1800店舗に展開。一躍ニュージーランドの健康ドリンク市場を席巻する存在となった、「Ārepa」のヒットの理由に迫ります。
当サイト『uerkenGAKU』
調査チーム(Zenken)
「健康美容EXPO」などの健康食品に関連するメディアを運営するZenkenが今消費者に求められているウェルネスフードとは何なのかをリサーチ。国内外のマーケティング成功事例・失敗事例などを独自の目線でピックアップしてご紹介します。
「Ārepa (アーレパ)」とは?
「Ārepa」は大学時代の同級生であるAngus氏とZac氏が共同で立ち上げたブランド。20代の頃から友人や知人が認知機能に悩まされているのを目の当たりにし、自身もストレスや不安を抱えることが少なくありませんでした。そこで、世界的に有名な神経科学者であるAndrew Scholey教授と協力し、商品の開発に取り組み、10年の歳月を費やして「Ārepa」が誕生しました。
Angus氏は「ヌートロピック(Nootropics=向知性薬)はエリート主義的な言葉に思われがちだが、脳機能の健康を守ることは誰にとっても大切である」と主張。その言葉どおり脳機能に対するニーズは幅広く、一部の高級店舗だけでなく、多くの小売店でも販売されるようになり、売上も直近5年で毎年2倍以上の伸びを見せています。
シンガポールなどへの国外進出も果たしている「Ārepa」が、ここまで消費者に受け入れらえた要因はどこにあるのでしょうか?
「Ārepa」の成功要因は?
一般的にムードやマインドといった、メンタル作用が期待されるドリンクは消費者が効果を実感しにくく、失敗するケースが少なくありません、そんな中、Ārepaがヒットした要因はどこにあるのでしょうか?
1995年創刊で、42カ国、1000社以上におけるウェルネスフード業界の上級管理職が購読している専門媒体『New Nutrition Business』の分析レポートから、その成功要因を3つに絞ってお伝えします。
成功要因その①: 「ブレインドリンク」というコンセプト
数年前から認知機能や記憶力を高める商品として期待されていたのが「ヌートロピック(Nootropics=向知性薬)」。日本ではスマートドラッグとも呼ばれていますが、その存在自体は欧米でも一部のエリート層でしか知られていませんでした。
そこでĀrepaの創業者でCEOのAngus氏は、「ブレインドリンク」としてĀrepaを販売。認知機能の向上だけでなく、ストレス軽減などにも役立てることができる点を訴求し、コンセプトをより幅広い層に届けることに成功しました。
また同氏は、「人々のQOLを向上させ、それにより認知機能低下による経済的負担を軽減し、経済的生産性を向上させることにある」とĀrepaの存在意義を語っています。脳機能と健康を結び付けたコンセプトこそが、Ārepaの成功の要因と言えるかもしれません。
成功要因その②:サイエンスを活用したマーケティング
Ārepaはニュージーランド産のブラックカラント、松樹皮抽出物、お茶由来のL-テアニンなどを配合。これらの成分が認識機能改善に効果があると実証するため、同社は積極的に臨床試験を進めています。
Dementia Australia社から70万ドルの資金提供を受けて、軽度認知障害者の集団に対するニュージーランド産ブラックカラントの効果を検証。ある大学生を対象に行った実験ではĀrepaを一度摂取しただけで、作業記憶が改善される可能性があるとの報告もありました。
「サイエンスは我々のマーケティングで、科学的根拠を発表すると良い報道がなされ、認知度が上がる」 とAngus氏は語っています。Ārepaの躍進を見る限り、そのマーケティング戦略は正しかったと言えるでしょう。
成功要因その③:成長を下支えする原材料の確保
ブラックカラントをはじめ、希少な原材料を確保するための取り組みも見逃せません。2021年にはサントリー社の清涼飲料水Ribenaより多くのブラックカントを購入。さらなる増産を視野に入れるとともに、フラボノイドが豊富な松樹皮エキスEnzogenolのサプライヤーとも提携し、小規模研究で認知機能の向上が確認されました。現在は一時検討していた米国市場進出を中止し、ブランド成長のための資金調達や人材確保に奔走しています。
こうした状況を見て、足元を見つめなおす手堅さもĀrepaが成功した要因と言えるのではないでしょうか。