日本初の免疫ケアを訴求する機能性表示食品として、注目を集めたキリンの「iMUSE(イミューズ)」は、手軽な食品から免疫の維持を図れることで、コロナ禍で大ヒットしました。ここでは、「iMUSE」の開発経緯とマーケティング戦略、消費者の口コミ評判などをご紹介します。
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調査チーム(Zenken)
「健康美容EXPO」などの健康食品に関連するメディアを運営するZenkenが今消費者に求められているウェルネスフードとは何なのかをリサーチ。国内外のマーケティング成功事例・失敗事例などを独自の目線でピックアップしてご紹介します。
「iMUSE」は
どのように開発されたか?
日本初の免疫ケア訴求の機能性表示食品「iMUSE」は、キリンの長年の発酵技術と機能性マーケティングの戦略から生まれました。そして、新型コロナウィルスの影響で免疫力に注目がされるなかで、注目度も急上昇。ここでは、「iMUSE」開発の経緯や背景について紹介しています。
日本初の「免疫ケア」を訴求する機能性表示食品
機能性表示食品では安全性と機能性に関する科学的根拠や必要な事項を消費者庁に届け出れば、その機能性を謳うことができますが、免疫機能が受理されたケースはこの「iMUSE」が初(※)。2020年11月の発売以降、「iMUSE」のような免疫訴求を狙った機能性表示食品の届出が出されましたが、いずれも受理されていません。35年以上に渡って免疫研究を続けてきたKIRINだからこそ開発できた商品と言えます。
KIRINは独自素材「プラズマ乳酸菌」を使用した「iMUSE」のブランド戦略も展開。飲料・サプリメントだけでなく、ヨーグルトも小岩井乳業から発売されました。コロナ禍での免疫力への注目も高まる中での「iMUSE」の登場は、健康食品業界の大きなニュースとなりました。
ヘルスサイエンス事業を代表するブランドに
元々ビールのイメージが強いKIRINですが、近年はヘルスサイエンス事業に力を入れています。35年に及ぶ独自の発酵技術や生物学上の知見が詰まった「iMUSE」は、いまやこの事業を代表するブランドに成長しました。
「iMUSE」ブランド飲料の販売数量は、2020年発売から約半年4で計6,600万本を突破(※)。2021年の年間販売数量も前年比約7割増と大きく伸長しました。こうした好調ぶりや免疫に対する需要の高まりを受け、2027年にはプラズマ乳酸菌事業を売上高500億円・事業利益20%の事業に成長させる見込みです。
消費者にわかりやすく伝えるコミュニケーション戦略
「iMUSE」の免疫機能の根幹を担うのがプラズマ乳酸菌。「免疫の司令塔」である「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」を直接活性化し、その司令塔の指令を受け、免疫細胞全体が活性化され、外敵に対する守りを強化します。
実はこのプラズマ乳酸菌を使った商品は、すでに同グループの小岩井乳業からヨーグルトとしてリリースされていましたが、知名度が低かったため、グループを横断して「iMUSE」というブランドをまず立ち上げることになりました。消費者によりわかりやすくプラズマ乳酸菌の機能を伝えるために、1つのボールがプラズマ乳酸菌にぶつかって、細胞全体が活性化するようなイメージでCMを製作。さらにタモリなど著名人をCMに起用することで、プラズマ乳酸菌の知名度を高めていきました。
「iMUSE」がヒットした背景には、こうしたコミュニケーション戦略があったことも忘れてはならないでしょう。
iMUSEを購入した
消費者の口コミ評判まとめ
多くの消費者が免疫力アップを
実感
50代・女性
「乳酸菌は様々なサプリが販売されていて奥深いです。中でも、この『iMUSEレモンと乳酸菌』は、免疫機能を高めるプラズマ乳酸菌のドリンクです。飲むととても疲れがとれます。体力アップにもおすすめです」
50代・女性
「iMUSEは甘過ぎず、美味しいです。お腹の調子がよくなりました。また、娘にもおすすめしました」
30代・女性
「コンビニでiMUSEレモンと乳酸菌を見かけたので購入しました。さっぱりとした味で、ごくごくと飲みやすいです。
免疫力アップに期待しています」
40代・女性
「普段はあまりジュースを飲まないのですが、体調がすぐれないときや水分を取りたいときに飲みやすくてよいです。味も甘くなくてよいです」
30代・女性
「セブンイレブンで『iMUSEレモンと乳酸菌』を購入しました。さっぱりとした味で、ヤクルトよりも薄めの乳酸菌飲料にレモンのさわやかな風味を足して、飲みやすくした感じです。継続して飲んではいないため、免疫力が上がったかは分かりません」
60代・男性
「『iMUSEレモンと乳酸菌』をドラッグストアで買っていましたが、商品がなくなり、楽天市場で注文しました。これを飲むと安心感があります。前にそういう体験をしましたので。毎日飲まなくてもいいけれど、集中的に飲むとよい感じです」
20代・男性
「レモンの酸味や甘みが強すぎず、美味しいです。水分補給としてゴクゴク飲めます。低カロリーなので、ダイエット中にありがたいです。乳酸菌入りなので、腸活にもよさそう」
「iMUSE」はなぜ売れた?
新型コロナウィルスの影響もあり、免疫に対する消費者のニーズは高まるばかりです。KIRINの消費者(対象は全国20歳以上の男女)調査によれば、2020~2021年の間で健康のために新たに取り入れた生活習慣の1位が「免疫ケア(18.3%)」※。今後も免疫の需要は伸びていくはずで、こうしたニーズやトレンドを的確にとらえ、「iMUSE」というブランドを誕生させたKIRINの戦略は見事という他ありません。
最大のヒットの要因は、やはり「免疫の司令塔を活性化する」という機能を消費者にわかりやすく伝えたことでしょう。テレビCMはもちろん、WEB広告、免疫のメカニズムを伝える記事、交通広告、消費者キャンキャンペーンなど様々な手を打ち、知名度を徐々に高めていきました。
免疫の領域は容易に参入できる分野ではなく、2022年11月現在でも「iMUSE」のライバルになりえるようなヘルスケア商品は台頭してきていません。免疫領域においては、しばらく「iMUSE」の独壇場が続くかもしれません。
【専門家に聞く】
海外トレンド・グローバルな視点で見た
「iMUSE」の成功要因は?
日本のウェルネスフードのトレンドは、より健康食品の研究開発が進んでいる海外の影響を受けているケースがほとんどです。つまり海外トレンドを知っておけば、日本でこの先売れ続けるウェルネスフードの傾向が把握できると言っても過言ではありません。
ここでは、海外の健康食品トレンド情報に精通しているグローバルニュートリショングループの武田先生に、グローバルな視点で見た「iMUSE」の成功要因を解説してもらいました。
株式会社グローバルニュートリショングループ
35年以上一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。機能性表示食品普及推進協議会設立メンバーであり、『健康食品ビジネス大事典』『ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング』など健康食品関連の著書もある。現在も年間50件以上の企業セミナーを開催し、欧米トレンドを採り入れたマーケティング視点で、数々のヒット商品の開発に関わる。
グループ代表取締役 武田猛先生
海外のヘルスクレーム制度を
研究して届出に成功
プラズマ乳酸菌のiMUSEが成功した要因の一つは、何と言っても日本初の免疫機能の表示が出来る機能性表示食品として届出ができたことでしょう。 2020年8月7日にプラズマ乳酸菌を機能性関与成分とする5商品が届出公表されましたが、それ以降、プラズマ乳酸菌以外の成分で免疫機能の機能性表示食品としての届出はありません。いわば、プラズマ乳酸菌の独り舞台と言えます。
なぜ、プラズマ乳酸菌だけが届出できたのでしょうか?
その秘訣は海外のヘルスクレーム制度を研究し、その内容を機能性表示食品の制度にうまく活用できたからです。
具体的には、EU(欧州連合)ヘルスクレームで求められる科学的根拠について分析をしています。機能性表示食品の届出書類は消費者庁のHPで公開されていますが、プラズマ乳酸菌の届出書類(別紙様式(Ⅴ)―4)に以下のような記述があります。
「Guidance on the scientific requirements for health claims related to the immune system, the gastrointestinal tract and defense against pathogenic microorganisms, 2016」
これを翻訳・補足すると以下のようになります。
「当該ガイダンスにおいては、免疫機能に関する表示を科学的に評価するためには、臨床的アウトカムや有益な生理的効果に対する機能性関与成分の有効性を検証することが求められている。それに加えて、各種免疫マーカーに対する効果についても、機能性関与成分のメカニズムを示す指標として重要視されている。これらを踏まえて、表示しようとする機能性に対しては、pDC に対する有効性と、臨床的アウトカム(体調に関する自覚症状)に対する有効性を、研究レビューのアウトカムと設定して機能性関与成分の有効性を検証することが望ましいと考えられる」
この考え方は機能性表示食品の届出ガイドラインにも合致しているため、届出することができました。
プラズマ乳酸菌以外の成分はこの考え方に合致していなかったため、未だ届出ができていない状況です。
海外の制度を研究し、国内制の度に応用することで日本初の「免疫ケア」食品群を誕生させることができ、他の成分の追随を許さず独占が続いています。