おいしくて、からだにも優しい。食事の楽しみと健康な生活を両立させる、 そんなコンセプトを掲げて江崎グリコが開発したのが「SUNAO(スナオ)」。糖質をコントロールしながらお腹いっぱいおいしく食べる「適正糖質」の考えをもとに、アイス・ビスケット・クッキーの菓子類はもちろん、パスタやリゾットもSUNAOシリーズとして販売されています。特に糖質を50%抑えたアイスセレクションは、大きな話題となりました。
当サイト『uerkenGAKU』
調査チーム(Zenken)
「健康美容EXPO」などの健康食品に関連するメディアを運営するZenkenが今消費者に求められているウェルネスフードとは何なのかをリサーチ。国内外のマーケティング成功事例・失敗事例などを独自の目線でピックアップしてご紹介します。
「SUNAO」は
どのように開発されたか?
糖質適正に着目した「SUNAO」は、「食と健康」という江崎グリコが創業から掲げる理念を体現したようなブランドです。2017年にまずアイスシリーズが誕生し、そこからビスケットやリゾット、2022年2月にはパスタシリーズもラインナップに加わり、知名度を高めています。 ここでは、「SUNAO」の開発経緯からマーケティング戦略まで紹介します。
糖尿病患者でもおいしく食べられるアイス
「糖尿病の方でもおいしく食べられるアイスは作れないか」
開発のきっかけとなったのは、とある病院に勤める管理栄養士から受けたそんな相談でした。そこから「カロリー80kcal以下」「砂糖不使用」などのミッションを掲げ、糖尿病を患う方や血糖値を気にする方でも安心して食べられるアイスの開発がスタート。2001年のことでした。
当時、アイスのカロリー数は120ml程度なら250kcal前後が一般的。80kcalまで減らしておいしさを表現するのは至難の業でしたが、試行錯誤の末に豆腐と食物繊維を使うことで開発に成功しました。 発売された2003年当時は「カロリーコントロールアイス」という商品名でしたが、カロリーから糖質オフをより重視する消費者ニーズの変化を受けて方針を変更。2017年に80kcalに加え糖質も10g以下に抑えた「SUNAO」シリーズのアイスクリームが新たに誕生しました。
機能性よりも美味しさや食べる楽しみをPR
前身の「カロリーコントロールアイス」は療養食というイメージが強かったため、「SUNAO」ではより幅広い層に糖質でも美味しく食べてもらいたいというコンセプトをもとに、リブランディングしました。
ただ、新ブランドを立ち上げた当時は糖質オフの食品の認知度があまり高くなかったため、糖質オフを前面に押し出すと「おいしくなさそう…」「体重気にしているみたいで恥ずかしい…」というネガティブな印象を持たれる可能性がありました。
そこで、SUNAOシリーズのコンセプトである「自然なおいしさ」や「食べることの楽しみ」をPRする戦略を採用。2021年には品質の大幅な改良を図り、カロリーと糖質を抑えながらも乳固形分と乳脂肪分をアップさせてより美味しさが感じられる商品へと進化を遂げました。
「SUNAO」ブランドを主食類にも展開
2017年にアイスクリームから始まった「SUNAO」は、様々な商品に広がりを見せています。2018年にはビスケット、2020年にはリゾット、2022年にはパスタがラインナップに加わりました。
スイーツだけでなく、主食類にも商品展開をするのは「適正糖質」という考え方を消費者の食生活に浸透させるため。「適正糖質」とは、いわば緩やかな糖質制限のことで、1食で摂取する糖質量を20~40g、1日なら70~130gの適正量に抑えながら、健康に食事を楽しむという考え方です。
グリコではSUNAOシリーズを展開するだけでなく、CMやWEB広告、消費者参加型のイベントを打ち出すなどして、この「適正糖質」を広めようとしています。こうした地道なPR戦略が今のSUNAOシリーズの人気を下支えしていると言っても過言ではありません。
SUNAOを購入した
消費者の口コミ評判まとめ
「低糖質なのに美味しい」と味も高評価
20代・女性
「ダイエット向けのお菓子ということですが、脂質が結構高く、糖質制限している方向けですね。味はダイエット向けと分からないくらい美味しいです。価格も100円程度なので、安価だと思います」
40代・女性
「糖質50%オフなのに普通のクッキーと変わらないくらいに美味しいです。厚さも薄めですが、歯ごたえがあります。バターの穀もあり、小腹が減った時にちょうどいい感じです。ただ、食べ過ぎに注意が必要です」
20代・女性
「ダイエット中にどうしても甘いものが食べたいときの救世主。糖質50%オフなので、普通のクッキーを食べるよりは罪悪感なく食べられます」
30代・男性
「糖質50%オフ。豆乳、小麦胚芽、バンホーテンココアパウダー使用。1枚目を食べた時は、甘さ控えめと思いましたが、食べ続けるうちに甘くなってきました。普通においしいし、食物繊維も取れます」
10代・女性
「コンビニを歩き回っていたら、低糖質で低カロリーのクッキーということに惹かれ、即購入。学校でのおやつに買いましたが大ヒット。学校で遅くまで残っていたので、お腹に溜まってよかったです。友達も美味しいと言っていました」
20代・女性
「糖質オフのロカボ商品でとめも軽い感じでした。お腹に少し溜まります。軽いおやつにちょうど良いです。チョコチップの種類もあるようです」
20代・男性
「発酵バターを16%も使用したビスケットのようです。バターの豊かな味わいとサクサクした軽い食感が楽しめます。一袋食べても糖質10g以下なので、ダイエットによさそうです。食物繊維も豊富なので、腸活にもよさそう。ダイエット中の私もかなり気に入り、他の味も購入予定です」
20代・前半
「最近家にいる時間が長く、甘いものを食べてしまいます。SUNAOならば低カロリーで低糖質なので嬉しいです。1袋154kcal、糖質9.2gなのにバターの香りがして満足感が残ります。糖質制限のお菓子には期待していませんでしたが、本当においしくてびっくりしました」
50代・女性
「SUNAOのバニラアイスを購入しました。食べてみたところ、とてもおいしかったです。しかも低カロリーも嬉しい。コンビニなど、色々なところに売られて、買いやすいです。しかし、値段が少し高めなのが難点です」
SUNAOはなぜ売れた?
糖質オフを謳った商品の多くは健康的である一方で、「おいしくなさそう」「物足りなさそう」とマイナスなイメージを持たれがちです。糖質オフの商品は一般的に乳製品や砂糖の代わりに食物繊維を使いますが、苦みがあったり、ボソボソした食感になったりしてしまうのが課題でした。
SUNAOシリーズは、グリコ独自の研究と食物繊維の選定に徹底的にこだわることで、これらの課題を解決。糖質オフでも美味しさを追求した商品を開発することに成功しました。また、商品力だけでなく、「適正糖質」という考え方を広めようとしたPR戦略も成功の要因の一つと言えそうです。
消費者の口コミを見る限り、味や満腹感に関して高く評価する声が大半で、SUNAOシリーズの人気は今後も継続していくでしょう。糖質を制限するトレンドがさらに加速すれば、より大きなブランドになるかもしれません。
【専門家に聞く】
海外トレンド・グローバルな視点で見た
「SUNAO」の成功要因は?
日本のウェルネスフードのトレンドは、より健康食品の研究開発が進んでいる海外の影響を受けているケースがほとんどです。つまり海外トレンドを知っておけば、日本でこの先売れ続けるウェルネスフードの傾向が把握できると言っても過言ではありません。
ここでは、海外の健康食品トレンド情報に精通しているグローバルニュートリショングループの武田先生に、グローバルな視点で見た「SUNAO」の成功要因を解説してもらいました。
株式会社グローバルニュートリショングループ
35年間㇐貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。機能性表示食品普及推進協議会設立メンバーであり、『健康食品ビジネス大事典』『ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング』など健康食品関連の著書もある。現在も年間50件以上の企業セミナーを開催し、欧米トレンドを採り入れたマーケティング視点で、数々のヒット商品の開発に関わる。
グループ代表取締役 武田猛先生
「罪悪感なく食べられる」という魅力
SUNAOの成功要因の一つは、「ヘルシースナック」という強力なグローバルトレンドを取り入れたことだと思います。
英国のウェルネスフード業界専門誌『New Nutrition Business(NNB)』は「スナック化は、おそらく最も強力で一貫した長期的なトレンドであり、企業に創造的な新製品開発、成長、利益率向上のための豊富な機会を提供している」と述べています。
NNBは毎年「10 Key Trends(10キートレンド)」を選出していますが、「ヘルシースナック」は2007年以降、一貫して10キートレンドに入っています。そして、2020年以降は、この10キートレンドのすべてに影響を与えるメガトレンドとして取り上げられています。
スナック化はあらゆるカテゴリー、あらゆる種類の食品・飲料に影響を与え、カテゴリー間の境界を曖昧にしています。
グローバルな調査会社であるNielsenの調査によると、消費者の頭の中ではチョコレート、チップス、ヨーグルト、フルーツ、乳製品のデザート、チーズ、クッキー、ナッツ、インスタントラーメンなど、何でもスナックとみなされるようです。 実際、SUNAOもビスケット・クッキーなどのお菓子に限らず、パスタやリゾット、そしてアイスクリームまで揃っています。
NNBの「Strategies in healthy snacking」というレポートには、「スナック化で成功するための10の戦略」が示されています。
- 臆さずプレミアム価格に
- 成功ブランドは小規模を受け入れる
- どのカテゴリーもスナック化が可能
- どの場面にもスナックを提供
- 新商品開発に制約をなくす
- 従来商品を再開発、他所の商品を取り入れる
- 主要な成長トレンドと関連させる
- 「罪悪感なく食べられる」
- とにかくサンプルを提供
- 適切な棚に、または直販で
この中で特に重要な戦略は
「7.主要な成長トレンドと関連させる」
「8.罪悪感なく食べられる」
だと思います。
SUNAOは低糖質、高食物繊維を前面に出していますが、「低糖質」は「ウエイトウェルネス」というメガトレンド、「高食物繊維」は「腸のウェルネス」という強力なトレンドを取り入れています。
そして何より「罪悪感なく食べられる」という魅力です。
このように、海外トレンドをうまく取り入れることで日本のマーケットでも成功する商品が誕生するという好例ですね。