世界的なインフレやエネルギー価格の上昇など、様々な業界が多くの課題を抱えています。ここでは、サプリメント業界が直面している課題を10の項目に分けてピックアップ。それぞれの課題と現状について解説しています。
課題と現状1:Amazonが品質基準向上を推進
Amazonはオンライン販売の世界的大手です。Amazonはサプリメント販売も行っていますが、その中でサプリメント業界の品質基準を向上するであろう方針を打ち出しました。
- 分析検査証明書(CoA)
- 原材料表示など全ラベル表示を含む商品画像
- 米食品医薬品局(FDA)規制である適正製造基準(GMP)認証
これら3つの提出を小売業者に義務付けたのです。小売業者は、このような変化に対応する必要があります。
課題と現状2:FDAがNACは販売に適さないとした
人気のサプリメント成分であるN-アセチル-L-システイン(NAC)の含有商品は販売に適さないとの発表を行いました。NACの安全性について確実ではないとの認識から、ダイエタリーサプリメントへの使用が懸念されてはいました。
しかし、アメリカで30年以上NACを含有するサプリメントが販売されていることもあり、その驚きは大きなものです。消費者からの需要もあり継続して販売できる現状ではありますが、Amazonが販売を許可するにあたりFDAからの最終ガイダンスが必要かどうかが問題となっています。
課題と現状3:製品リストへの掲載義務化(MPL)
MPLでは、メーカーに対してすべてのサプリメントの全情報提出を義務付けました。
- 商品名
- 成分
- ラベル画像など
自然製品協会はメーカーの負担が増えることや機密情報を公開するリスクがあることから反対しており、提出情報を限定することやリストをサプリメントの市販前承認のツールを使わないことを要望しています。
課題と現状4:サプライチェーンへの影響
新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、中国がロックダウンしたことはサプリメント産業にとっても原料不足に陥る大きな困難となっています。また、ロシアのウクライナ侵攻でも原料不足に陥っています。代替品による原料そのものは確保できたとしても、それを輸送する手段を要しするのも困難です。
コンテナさえ入手できない事態が起こっており、輸送費も高騰しています。
課題と現状5:インフレ
インフレにより燃料費や人件費、輸送費が高騰しています。その一方でサプリメント産業の売り上げは落ち込んでいることもあり、インフレはサプリメント産業にとって大きな課題となっています。
課題と現状6:CBD産業の動向
FDAは、CBDが一般的に安全と認められている原料であるGRASではないと表明しました。これにより、CBDが食品原料として使用できなくなる可能性があります。サプリメントに使用されることも困難となるため、FDAに新規ダイエタリー原料として安全性を申請する必要が出てきますが、受け入れられない可能性もあります。
ペット市場では大麻植物に含まれるデルタ-8THCを非合法とする州が増えており、明るい話題として取り上げられています。
課題と現状7:免疫サポート商品市場の拡大
新型コロナウィルス感染症のパンデミックによって免疫サポート商品の市場が拡大しています。サプリメント産業でも、亜鉛やビタミンC、新しいプロバイオティクスなどの原料が注目され業界を盛り上げています。
課題と現状8:プロバイオティクス市場が下降気味
プロバイオティクス市場そのものは、予防医療に対する関心の高まりなどによって成長傾向にあります。新型コロナウィルス感染症のパンデミックで免疫力を高める商品の需要が拡大したことでも、プロバイオティクスの免疫力向上作用が注目されました。しかし、サプリメント産業では、プロバイオティクス市場が下降気味です。これは、サプリメントではなく発酵食品や飲料でプロバイオティクスを摂取する傾向が高まっているためだと思われます。
ただし、プロバイオティクスなどの微生物が生命活動をする上で重要であることは間違いなく、今後はポストバイオティクスに注目が集まることが期待されます。
課題と現状9:健康意識・消費の高まり
近年では、人間の健康だけでなく地球環境の健康、SDGsやエコなどに対する意識も高まりを見せています。
- アレルゲンフリー
- 機能性の追加
- オーガニック
- アップサイクル
- 動物福祉
- フェアトレード
- 再生
- 特定の食生活(ヴィーガン、ベジタリアン、マクロビなど)
「健康」だけでなく「社会の在り方」に対して意識が向いているのも近年の特徴です。特定の食生活を実施するアメリカ人は43%にも上ると言われており、サプリメント産業でもそれらの意識に対応していくことが求められます。
課題と現状10:ヘルスケアシステムの信頼失墜
保険や医療、福祉など健康を実現するためのヘルスケアシステムは、各施設で構築されています。しかし、ヘルスケアシステムに政治が介入しているケースが多く、システムそのものに対する信頼が失われている現状があります。
サプリメント業界においても、品質が低下しているなどの噂が出てきており、いかに消費者の信頼を得るかが重要視されています。信頼を得るための手段として、Amazonが打ち出した政策は信頼を回復させるための有益な一手となり得るでしょう。